2013年1月15日火曜日

二兎を追うべきか、一兎を追うべきか



あるクライアントさんの12月売上速報値が出た。

昨年対比2%マイナス!という結果。

結果だけみれば

「善くないね」「不況だもん、まあこんな感じだよな」という方もあるだろう。

だけど、昨年の売上との比較を内訳でみると、驚きの結果になっている。

(2011年)     (2012年)
下請け:8割   下請け→0  
直  販:2割   直  販→10割

トータルの合計は、前年比マイナス2%だけど、直販の伸びはなんと前年比5倍以上!

背景をご紹介しよう。

元々、このクライアントさんは元々直販業務を主に経営してきたのだが、長期の不景気ということもあり、金融機関さんの紹介もあって、下請け業務を受け容れてしのいできた経緯がある。だが、ホンネで言えば、下請け業務は辞めたかったのだ。

というのは、下請け業務は、コストを切り詰められ、緊急対応を求められ、辛い業務だったからだ。背に腹は変えられぬ、と請け負ったものの、在庫は増え、売掛金の回収に3ヶ月もかかり、キャッシュフロー負担は増えていた。最も悲しいことは、一生懸命応対してもお客さんから感謝されない仕事だったのだ。

「これでは何のために仕事をしているかわからない。自分が一生懸命やったことをお客さんから感謝される仕事がしたい。ならばお金は厳しくなるだろうが、思い切って辞めてみよう」それが、この社長の決断だった。

なかなか重い決断だ。

このご時世なかなか売上があがらない時である。固定費の負担のために定期的に入る仕事を誰もが求めている。しかも、リピートがほぼ確実にある業界の仕事。

なんと言っても昨年8割の売上がある事業。不定期で緊急対応を求められる業務ではあるものの、低いとはいえ利益は確保できる事業だ。


そんなの辞められるだろうか?

数字に頭いっている会社ならこうはいかない。普通なら「下請けも直販もどっちも欲しい」のが当たり前。二兎を追うのが商売人だ。


それを12月に思い切ってゼロにした。直販だけに振り切った。

この社長の決断に、社内の誰もが反対した。

税理士も反対した。コンサルも反対した。だが、社長は決断した。自分達がやりたい方向はそちらではない、と。

結果は昨年対比2.3%マイナス。

表面の数字で評価されるとするなら、マイナスはマイナスである。しかも、売上の柱となっていた事業を辞めてしまう決断は論理的とはいえない。

しかし、数字では現れない、情熱やチームワーク、やりがいなどから「この仕事はできません。このまま引き受けていたら、かえってお客さんにも迷惑がかかる」と決断した。

直販は波がある事業だ。

12月は5倍以上に伸びたものの、1月は?2月は?短期の予測すら立てにくい。不安だらけだ。

だが、不安は、このご時世、どんな事業にも付きまとうものだ。

「楽しいか、楽しくないか、だけで判断すればいい!結果は後からついてくる!自分が盛り上がっていかないと、その情熱は他人には伝わっていかないよ!盛り上がっていこう!」

一見、いいかげん、と言われるようなコンサルティング指導をしてきた自分も、決断を迫られた瞬間だった。

この決断が吉と出るか凶と出るかは、まだわからない。

売上規模から考えたら時期尚早だったかもしれない。まだまだ二兎を追わなくてはならない時期かもしれない。

だが、この決断後、確かなことがある。

それは、この会社がスタッフ全員が100%の力を投入できるようになり、ますます笑顔溢れる職場になって、社長を筆頭に楽しみながら、笑いながら、嬉しそうに仕事している、ということだ。

今後も応援していこうと思う。


それでは。今日もお元気で!


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