「ウナギ価格高騰で客離れ」と言われます。
庶民の飯だったうなぎは、不況にもかかわらず、というか、むしろここ近年価格が高騰し、価格だけは高級食へとアップしています。
そんなうなぎ店にお客を呼び込むためにはこれまでのような広告、マーケティングだけで通用しなくなりました。単に、ホームページを作れば善い、とか、フェイスブックやツイッターを始めれば解決する、ユーチューブにビデオをアップすれば善い、クーポン券を発行すれば善いなどといった小手先の方法が通用するほど甘くありません。
どうしたらいいのでしょうか?
毎月、うなぎ店を経営するクライアントと共に、その経営方法やサービスなど善い点を学ぼう、と気になるうなぎ店に学ぶ
食べ歩き勉強会「うなぎに学ぶ会」(笑)を行なっています。
前回は、多治見市内の名店を廻ったのですが、今回は、愛知・岐阜の名店を3店巡りました。
まずはこちらから。
1、うなぎの西本(名古屋市東区 16-14)さん
大曽根駅から徳川園の北側を歩き、名古屋城鬼門鎮座の「片山八幡神社」の交差点を左折して進みます。徒歩10分ほどで到着するのがこちらの西本さん。
こちらは多治見のうなぎの名店さんもご推奨されているとのこと。名店は名店を知る、つまり、美味しいはず!期待できる、ということでございます。
西本さん、入り口は派手派手しいこともなく、落ち着いた雰囲気。とてもシンプル。そして、こぎれいで上品な雰囲気なのです。
そんな上品な西本さん、まずは、肝焼きからいただきます。
うん。美味しい!
肝焼きってレベルがありますよね。蒲焼よりも判り易いかもしれません。
さて、このお店には、「白焼き」を汁で頂く、これが美味、という噂があります。
その噂を確認するべく、、、
白焼き御前、長焼き御前の二種類を頂きました。「汁」というのはなんだろう、、、、と待っていますと
お店の方にうかがいましたが、「汁???うーん、わからないけど、うちではこちらのしょうゆたれにつけてもらいますよ」とのこと。
で、出てきた小鉢にあるのは白醤油。
昔から白醤油、とのことでした。汁じゃないそうです。ではお味は?といえば、もう言うまでもありません。おいしゅうございました。
さて、西本さんには大変素敵な茶室風のお座敷が奥にございます。そちらへ向かう途中から映した写真でございます。大きく美しい錦鯉と四季折々の移り変わりをめでることができる中庭が大変美しい。「食事は目で味わうもの」と申しますが、こうした「しつらえ」が楽しめるのも、名店の善さですね。
季節感を感じること、そして、穏やかに愉しむ空間を提供すること、そんな無言の教えを頂きました。ご馳走様でした。ありがとうございました。
さてさて、続いての学びはこちら。
2、あつた蓬莱軒本店(名古屋市熱田区神戸町503)
「ひつまぶし」の発祥、と言われる、名古屋を代表するうなぎの名店でございます。
おじゃまするのは、今回で2回目でございます。
平日の午後1時過ぎにもかかわらず、行列が出来ております。
駐車場係の方に案内いただき、車を停めてまいります。いよいよ入り口へと参りますと、お客様係の方が入店時刻を知らせてくださいます。
このオペレーションはまるでディズニーランドのようです。とてもスムーズなのです。ビッグサンダーマウンテンを待つかの如く、蓬莱軒への入場を待つ、そういう風情でございます。
この日は15分ほどで入れました。とてもラッキーなことのようです。週末や祝日になると、長時間待つのも当たり前とのこと。なんとゴールデンウィークには100名ではなく1000名ものお客様が毎日みえられる、とのこと。
なんと、東京ディズニーランド、大阪USJと並ぶ観光地がホントに名古屋にもにあったのですね!
さて、待たせていただいている間は、入り口にある大きな松がお出迎え。そして、その奥に紅葉がみえます。こちらも西本さんと同じく季節感を大切にされているのでございます。ただうなぎ飯を目の前にして食べる、ということが頂くというのではありません。もう食事は車を停めて、入り口でお客様係の方と話をしたときから食事が始まっているのですね。
さあ、時刻になりました。入りましょう。こちらでは、靴を脱ぎ店内へ上がる、いわゆる、クラッシックなお店でございます。我々も誤解しておりましたが、蓬莱軒さんは、うなぎの専門店ではない、割烹料亭だ、とのことでございます。料亭ならば、靴を脱ぎ、座敷へ通される、というのもですね。はたして今回も若い仲居さんに案内されて二階の座敷へ。
まず頂いたのは名物「うな肝辛子味噌和え」、そして冷酒でございます。きもと冷酒は、切っても切れない友情で結ばれているのでございます。今日は熱田さんのお神酒のもの(銘柄名失念しました)を頂きました。
この冷酒、旨い!肝と冷酒、最高なのです。
さて、うな肝といえば、先ほど西本さまで頂いたように「焼き」で頂くもの、あるいは、「きも吸い」のように煮ていただくもの、とばかり思っておりましたが、そうじゃないみたい。
うな肝の苦味がまるでございません。さらーっとさわやかなのです。
しかも、食感はぷよっぷよとやわらかく、温かいぞ。なんじゃ?これは煮てあるのかな?蒸してあるのかな?どうも蒸してあるみたい。
この温かさのある肝を辛子味噌でいただきます。辛子味噌、と申しましても、激辛的といいますか、刺すような辛さではありません。むしろ、優しい辛味が温かい。こちら初体感でございます。添え付けは、きゅうりと赤かぶでしょうか。さっぱりとします。これはぜひいただいてほしいと思います。
そして、なんといっても、冷酒です。 肝と冷酒、最高なのです。
ひとしきり、冷酒を愉しんでおりますと、、、やってまいりました。蓬莱軒といえば、やはりこちら。名物「ひつまぶし」でございます。
「ひつまぶし」のいただき方は、蓬莱軒さんのホームページや食べログの蓬莱軒さんのページをはじめ、いろんなページで案内がございますので、そちらをご参照ください。
さてまず一口。付け合せのお漬物、これが抜群に美味しい。特に白菜の漬け物は冷酒に合うのでございます。
今回は、オーソドックスな「うな丼」を頂きました。「ひつまぶし」の細かく刻んだうなぎよりも、も少し大振りなうなぎだとどんな味わいなのか、こちらを楽しみにしておりました。
やはり炭焼き、熱々のうなぎはおいしゅうございます。そして、うれしいことに、「まむし」になってございます。「まむし」とは、飯の上に乗せた上に更に飯を乗せてうなぎを蒸らす「飯蒸し」(ままむし)から「まむし」へとなった、との説がございますが、ご飯とご飯の間に埋もれたうなぎ、こちらが嬉しいのでございます。
うなぎ食いにとってこの「まむし」が丼の中から発見されたときの喜びはまるで「お宝発見!」したかの如くの嬉しさでございます。
美味しさが喜びへと昇華された瞬間です。いやー、やはりうな丼はいいですね。
蓬莱軒さんにはスムーズなお客様の誘導、そして、丁寧なおもてなしをもお客様がお店の前に立たれたときから、お帰りになるまでが「接客である」という無言の教えを頂きました。ご馳走さまでした。ありがとうございました。
ランチタイムにうなぎ屋を2軒もハシゴして、満腹状態。ここで終了したのでは、うなぎ勉強会の名が廃るってことでもないのですが、せっかくなので、夜もうなぎに学ぼう、というわけで、場所を名古屋から岐阜県関市へと移動しました。
3、辻屋本店(岐阜県関市本町5-14)
辻屋さんは、「関うなぎの御三家」の一角。先ほどの蓬莱軒さんが「割烹料亭」を自負しておられるのに対して、「うなぎ専門店」としての誇りを持っておられるように感じる店構えです。関市の古くからの商業街、本町通りにございます。
夜の部の営業は、午後4時半から、ということで、名古屋からゆっくり岐阜を廻って関市へ到着した時刻もちょうど4時半。そんな我々を待っていてくれたかのように、辻屋さんでは大将が炭焼きされていました。
写真ではそうでもありませんが、縄のれんの向こうから鰻焼きの煙が上がりはじめています。さあ、入りましょう。
3軒目ということもあり、お店のお奨め「うな丼」を頂くことに。炭で焼きますから、焼きあがるまでに時間がかかりますよ。この待ち時間をどう過ごすのか、というのも学びになります。ご覧のように古い店舗です。そして、庶民的なうなぎ専門店の佇まいでございます。名古屋の名店のような季節感を味わうのではなく、料理に、うなぎへと真っ向対面するのが、辻屋を愉しむ秘訣かと思われます。
ということで、待ち時間、まずは、、、うな肝からいただきます。
肝焼きです。この肝焼きもいい感じ。
辻屋さんのうなぎたれが肝の苦味をいい感じに仕上げてくださっています。山椒をつけてもいいですね。またまた冷酒投入したくなります。でも、さすがに三軒目ですから、お腹もちもありまして、、、というところに、じゃーん!
鯉の洗いでございます。うなぎと鯉とは相性抜群。濃厚なうなぎに対して、さっぱりとする鯉の洗い。箸休めになるだけでなく、うなぎ飯が進む、善いアクセントになりますね。
しかも、今日は、この鯉に卵がついてるっじゃあないですか!!う、う、う、またまた冷酒投入したくなりますよ!
と、冷酒投入を迷っていると、、、本日のメイン、うな丼!
肉厚です。ホックホク。熱いっす!一般にうなぎは焼いた後に、食べ易いサイズに切るという手順だそうです。ところが、この辻屋さんでは、一切れ一切れ切ってから焼くスタイル。お店にも
「切ってから焼く」とありました。
どうやらこれが創業160年を超える辻屋さんのこだわりとのこと。そして、その結果はというと、、、、旨いっす!
たれがまた、辛くもなく、ちょい甘味がたまらんです。ふうふうしながら、味わいながら、うなぎを一切れ、はふはふと頂き、鯉の洗いで、さっぱりと、そして、肝焼きで苦味を愉しみ、うなぎたれがかかったご飯をほうばる。そんなローテーションならば、あっという間に完食!
なんなんでしょう!満腹だったのに食べれちゃいましたよ!それだけ辻屋さんの鰻も旨いんだな。
辻屋さんには、うなぎ専門店としての本質とは何か、、、まずは美味しい鰻を提供する、それが何よりも大事にすることだろう。たとえ店構えが立派でも、きれいであっても、基本をおろそかにしては何にもならないぞ。カッコつけるな。何を提供しているのか、そこを追及しろ、という無言の教えを頂いたように感じました。
【本日の学び】
「ウナギ価格高騰で客離れ」と言われます。かつては庶民の飯だったうなぎは、不況にもかかわらず、というか、むしろ逆に価格が高騰し、価格だけは高級食へとアップしています。
素材の価格が高くなったからといって、お客さんがそのまま通ってくれるわけではありません。「客離れ」とは価格が高くなった分、これまでのように通いにくくなった、というのが実態でしょう。
また、価格が高くなったことで、フレンチ、肉料理、割烹、高級中華など他の料理とも比較されることも増えてまいります。そんな中、うなぎ料理が選ばれるためには、提供するお店側に創意工夫が求められていることでしょう。
創意工夫が必要ということは、無限のアイディアや可能性があるということです。
つまり、ピンチはチャンスでもあるのです。
ただ、伝統に甘んじているだけでは打開できません。そんな気づきを頂くことができました。
ご相伴いただいた、
郡上の炭焼きうなぎ「魚寅」さん、一日ありがとうございました。
それでは。今日もお元気で!
ダイアログジャパンのYouTubeチャンネルを登録しよう
ダイアログジャパンブログをRSSで購読する